ちょっと今から仕事行ってきます

医師をしています。仕事、趣味など書いていきます

個性を出すこと

サッカー選手としてクラブチャンピオンズリーグ出場

プロ棋士となりタイトル獲得…

 

わかりやすい形での個性を伸ばし活躍している人もいるけど

ほとんどの人はそこまでの「個性」はない。

だけど、他の人より自分が得意な「個性」はきっと誰でも持っている。

 

いろんなところで自分の力を発揮する機会がありそれを見つける人もいれば

まだ自分の「個性」がわからない人もいる。

以前はそんな世界があるのかどうかもわからなかっただろう。

 

だけど今はネットという世界があるので誰でも発信することができ、

発信元はどんな場所からでもどんな立場でも関係ない。

一見マニアックに見えるようなことでもネットではコミュニティが形成されている。

自分が発信する側になることも、発信を受け取る側に徹することも可能だ。

 

「個性」の幅もだいぶ広がった。

必ずしも何かに秀でているものばかりが注目されているわけでもない。

 

例えばノマドワーカーが最近流行っていて、その世界に憧れている人も多い。

その中で一足早く成功を収めている人は、そのライフスタイルそのものが

「個性」となり、どういう人生を送ってきたのか。今何をしているのか。

それ自体がビジネスとなり、その人自体の価値を高めている。

 

ほとんどの人が会社や組織に属して自由がないと感じているため、

フリーという言葉がとても魅力に感じるのではないかと思う。

 

ドラマの「ヒモメン」では主人公の翔は働かないことに命を懸けているが

あそこまで命を懸けて働かないのであれば、それも一つの「個性」だろう。

多分ブログを書けば、はやる。(と思う)

 

逆に言えば社畜生活の発信もはやるのではないかと思うけど、

本当の社畜はブログやらSNSをコマメに更新している暇はなさそうだし

職場への責任感もあるのでアカウントは鍵付きで部外者は見られないかもしれないが。

 

同じグループのものから見ればあたりまえのことだったり、

大したこと言ってなかったとしても、

ほとんどの人がそのグループの外にいれば、

その情報は世間にとっては「新鮮で」「聞いたことのない」情報。

 

そういったものを発信している人はどんな人なのだろうと

多くの人が気にかけて自分から見に来てくれたり、ファンが出来たり。

会ったこともないのに気付いたら芸能人のように追っかけになることも。

 

ネットというのはその人の「個性」を好きになるところで

自分にとって今必要な人、好きな人に出会うことができるところなのかもしれない。

 

昔は現実世界から逃げているようなことも言われていたけど

今はその匿名性はそのままにネットの世界を現実での世界にすることが可能になった。

 

使う人にとってはすごくいい場所

使われる人にとってはすごく消耗する場所

 

なんだと思う。

【解説】グッド・ドクター第2話

録画して見ているので少しタイムラグがありますが、

第2話もとても面白かったです。

 

どちらかというと母親の菅原唯菜(山田杏奈)の話がメインな感じがして

少しコウノトリを見ている気分になりましたが、

山場は赤ちゃんの手術だったのは間違いないので、それは置いておきましょう。笑

 

今回はあらすじを書きながら解説を書いていきます。

 

・・・

女子高生の唯菜が学校で破水し、東郷記念病院へ救急搬送された。

赤ちゃんは低出生体重児で、壊死性腸炎が認められた。

小児外科のカンファレンスでは、術中死のリスクが高いという判断で、

病院のガイドラインに沿って手術はせず保存的に経過をみる方針となった。

しかし、湊(山﨑賢人)は唯菜にこのままだと赤ちゃんは死んでしまうが

高山先生(藤木直人)の手術なら助かると話してしまう。

湊は高山からきつく叱られ、夏美(上野樹里)からも

唯菜の病室やNICUへの出入りを禁止されてしまうのだった。

・・・

 

25週で生まれた唯菜の赤ちゃん。

壊死性腸炎とは、腸への血液の流れが障害され、それに感染が加わり

腸が壊死 (組織が死ぬ)してしまう病気です。

低出生体重児に起こる危険性が高い病気で、腸の免疫などが未熟であることが

原因の一つと考えられています。

 

広い範囲の腸が壊死したり腸に穿孔(穴が開く)した場合は手術が必要になりますが、

病状によっては腸の安静や点滴、抗菌薬などで保存的に経過をみる治療が一般的です。

(小児外科学会ホームページ参照)

 

今回は

「赤ちゃんの体力を考えるとオペは危険」

「病院のガイドラインでこのような場合は手術はしない」

ことから保存的な治療の方針となっていました。

 

病院によっていろんな規則はありますが、

患者さんの状態は千差万別なので、破ってしまうとここまで大事になる

ガイドラインなんてあるの??と思いますが、

東郷記念病院は私立ですし、そもそも白衣じゃない経営陣も多いみたいなので

規則にはうるさいのかもしれません。

 

・・・

唯菜は子供を助けたいという思いから手術をしてほしいと頼み込むが

手術するには未成年の唯菜ではなく成人した保護者の手術同意書へのサインが必要。

連絡を受けた唯菜の母、真紀(黒沢あすか)が病院へやってくるが、

唯菜の出産をよく思っていない真紀は同意書へのサインを拒否する。

 

そんな中、湊が赤ちゃんの腸が蠕動している(動いている)様子を発見。

腸管が温存できる可能性が見えてきた最中、容態が急変。

NICUで手術を行うことになったが、間宮(戸次重幸)は反対し、

手術室の看護師たちもオペ室以外での手術経験がないためできないと言う。

そこへ院長の司賀が入ってきて責任は自分でとるので手術を行うよう言うのだった。

 

・・・

壊死していたり血流が悪くなっていたりすると、腸は動かなくなってしまいます(蠕動停止)

エコーで腸の蠕動が見えたということは全部の腸を切らなくても良い可能性が出てきたということです。

 

急変したとき、すぐさま穿孔(腸に穴が開く)の可能性を言い当てたのはさすが湊です。

医学的に口の中から肛門までは体の外と同じ不潔な部分と定義しています。

穿孔することにより、腸内の細菌などが腹腔(きれいなところ)に漏れてしまい

重篤になってしまうため、この場合は緊急手術の適応と考えられます。

 

手術では壊死した腸を切る必要がありますが、

全部の小腸を切ってしまうと栄養の吸収が十分でなくなってしまいます。

 

どこからどこまでを切り、どれくらい残せるか、は非常に大事になってきます。

今回の場合、手術の時高山が

「トライツ靭帯の下方30センチ先からほぼ壊死!壊死部を切除する」

と言っていましたので、30センチの小腸を残すことができたのでしょう。

 

「ストマ造設に移る!」

ということは、切ったところはすぐに吻合せず、

一回ストマ(人工肛門)をつくり落ち着いてからもう一度手術をして

ストマにしたところを体内に戻してつなげる予定だと思います。

 

最後に湊がエコー画像から診断したbiloma(バイローマ)。

日本語では胆汁漏といい、胆汁がもれて塊のように溜まっている状態です。

(胆汁は肝臓でつくられ、胆のうに貯えられる消化液です)

手術操作で胆管が傷ついたのでしょうか?

湊の意見を聞き入れ、胆管を縫合してチューブを挿入しました。

高山と湊の距離が縮まった感動的瞬間でしたね。

 

これは余談ですが、

医者が緊急で夕方の微妙な時間(他のスタッフの日勤と夜勤の変わり目)に

緊急の検査や手術などの治療を入れようとすると、他のスタッフに嫌がられたり

反対される(「今日じゃなきゃダメなのか?」「やったことないのでできない」etc)

なぜか内輪からの攻撃に遭うことは病院あるあるですね。

必死で謝りながらオーダーしている先生を見ると、緊急になったのは

その先生のせいじゃないのにかわいそうだなと思うことはしばしばです。

もちろんそうでないところもあると思いますが。

 

今回はこの辺で。

次週も楽しみです!

 

2018年夏ドラマ グッド・ドクター第1話

突然ですが、私の趣味はドラマです。

ジャンルは何でも好き…ですが、医療ドラマはほぼ確実に見ています。

けど、医療関係者の中でも医者はあまり医療ドラマを見ていない気がします。

(看護師さんは結構見てる気がします。統計はしてませんが)

いつも心の中でそうそうと頷いたり、それは違うとつっこんだりしていますが、

それを書いてみたいと思います。

 

 

7月12日より始まった「グッド・ドクター」はかなり面白かったです。

救急・外科がメインの話が多い中、小児外科が舞台というのも珍しいなと思いました。

 

ドラマの中で「小児外科は全医師の0.3%で選ばれし者しかなれない」とありましたが、それは半分本当で半分嘘です。

 

日本では初期研修2年が終了すると、専門科を選ぶ(入局する)ことが多いです。

専門とする科は基本的に自由選択で、望めばその道に入ることができます。

ただし、小児外科はドラマにもあるように、厳しい現場環境・またどこの病院でも

必ずあるものではなく限られた施設でしかできないことから、

志の高い人がその道に多いという意味では「選ばれし者」という表現は

正しいと思います。

ちなみに欧米では成績によって専門科の選択肢が変わるため、

選ばれし者しかなれない科が存在します。

 

主人公の新堂湊(山﨑賢人)は自閉症スペクトラムを持つという設定でした。

その仕草や目線、話し方など、演技は見事でした。

確かに自閉症では医師になれないということはありません。

ただし、医学部の入学試験、病院実習前、臨床研修前の就職試験など、

要所要所で面接や口頭試問があります。

自閉症であることは数分の面接でも十分に分かると思われるため、

極端にコミュニケーションに問題がある場合はベッドサイドに出られない

可能性もあります。

 

ただし、面接は評価基準が曖昧ですし、

湊は知識や診察技術には問題なさそうなので、

母校でそのまま初期研修までしていたのであれば、

試験もパスしていたとしても納得です。

 

また、彼は自閉症の中でもサヴァン症候群です。

サヴァン症候群とは、自閉症スペクトラムなどの発達障害者のうち、

ごく特定の分野に対して突出した才能を持っていることです。

 

ただし、この“突出した”というのはあくまで本人の中で、ということであり、

必ずしも世間一般の中で見ても、というわけではありません。

もちろん、世間一般から見ても優れた才能を持つ天才型も含まれていて、

まさに湊はこの天才型の方であると考えられます。

 

 

湊は出勤時、偶然出くわした子供の事故に出くわします。

この時、診察で「緊張性気胸」であると診断し、そこにあるもので緊急処置を行います。

これはもうお見事です。

あの学年でここまで出来るとは。度胸も応用力もある。

私たちは普段病院という資材、人員の揃っている場で医療行為を行いますが、

それでも命に直結する処置を行うときは緊張します。

それを誰にも頼れない状況であるものを有効利用して行ったというのは素晴らしいとしかいいようがありません。

十分かどうかは置いておいて、一応アルコールで消毒もしていましたしね。

 

そして少年が病院に搬送されてから緊急手術をするまで。

心エコーは必要ないとの判断で緊急手術となりました。

そして手術をしている最中に心タンポナーデに気づく…という展開でした。

外傷患者が搬送されてきた場合、救急の現場では必ずエコーを使って

体内の出血について確認を行います。

対応したレジデントはエコーを行った上で心臓は問題なしと判断したのか、

胸は見る必要なしと判断したのか、そこは謎が残ります。

 

湊が小児外科で働き出し、最初の受け持った男の子。

横紋筋肉腫で長い間化学療法を続けてきたものの、再発が分かり再手術が予定されていました。

 

その男の子が突然腹痛を訴えます。

湊は腫瘍による「絞扼性イレウス」と診断し、すぐに手術しないと危険と訴えます。

主治医の間宮先生(戸次重幸)は接待ゴルフで不在、レジデントが指示を仰ぐも病院に戻るまでは2時間かかる・・・

通常外科系であればチーム制であるところが多く、

瀬戸先生(上野樹里)が回診していたことからもこの教室はチーム制であったのでは?

主治医不在時も全て主治医でないと対応できないのか??

…とそこは今回の本質でないので置いておいて。

 

絞扼性イレウスとは詰まっている腸に血流障害が起きている状態で、緊急手術の適応です。

手術をしなければ腸管の血流低下→腸管壊死(くさってしまう)という命に関わる状態です。

身体所見、バイタルサイン(意識レベルの低下含む)より、

危険な状態であることはベッドサイドでも判断可能だと思います。

 

しかし、さすがにCTなどの画像検査(あの場面では結局レントゲンも撮っていない)を

すっ飛ばして診断を確定、手術を開始することはまずないでしょう。

腸は長く、小腸だけで約6〜7mあると言われています。

いくら腫瘍再発が事前に分かっていたとしてもどこの範囲の血流が悪いのかは

事前にあたりをつけておく必要があると思われます。

また、保護者が側にいてお話可能な状況であれば、どんなに急いでいて簡単な説明になってしまったとしても、

最低限手術の同意書はとっていないと麻酔科も動いてくれないのではないかと思います。

もちろんオペ室に運んでから麻酔をかけている間に30分くらいはあるでしょうから、

ドラマで描写されてなかっただけで、その間に保護者に説明→同意書を取った可能性はありますね。

 

ドラマを通じて湊の医療に対する真摯な姿勢、母親と息子のやりとりなど、とても感動しました。

お兄さんとの過去など、気になる伏線もあるし、今シーズン最も気になるドラマの一つです!

 

私はドラマの視聴率や評判もチェックするドラママニアなのですが、

このドラマに出てくる医者が自閉症に対して理解がない発言が目立つという評判があるようです。

確かに悲しくなるような冷たい発言が目立ち、特に高山先生(藤木直人)の態度は何故そこまで敵視を…と思います。

しかし、医師として障害を理解していることと、同僚・部下としてその障害を持つ人がいるのはどうかということは違うのも事実です。

特に人員や業務内容にも余裕がない小児外科であれば、欲しかったのは即戦力でしょうから。

でも今後湊がこの教室にどのような変化をもたらすのか・・・楽しみです!!